モンハンスクラム【ゲームで学ぶスクラム】

モンハンスクラム【ゲームで学ぶスクラム】
目次

はじめに

この記事では、「モンスターハンター」を使ったオンラインで行えるスクラムワークショップについて説明します。

ワークショップには Full 版と簡易版の2種類があります。

Full 版はスプリントのタイムボックスを時間で区切って実施するものです。
4名を超える参加者がいるときにお勧めです。

簡易版はスプリントのタイムボックスを1クエストとして実施するものです。
4名以下で気軽に実施したいときにお勧めです。

また記事中にはスクラム入門の講義形式セッションもありますので、その部分だけでもお使いいただけます。

スクラム開発導入時の問題点

スクラム開発を始めるときや、未経験者がスクラムチームにジョインする際に問題となるのは、スクラムの流れを経験するのに、1週間や2週間といった期間が必要なことです。
これはつまり、スクラム開発で登場するスクラムイベントや作成物に触れる機会が、1週間や2週間に一度ということです。

人が何かを覚えるには、くり返すことが必要不可欠です。
スクラム開発のルーチンを覚えるまでには1週間や2週間といったスプリントを数回経験しなくてはなりません。
1週間や2週間といった長いスパンのくり返しでは、スクラム開発に慣れるまでに膨大な時間がかかってしまいます。

ワークショップによる解決

そこで解決手段として提示できるのがワークショップです。

OJT 形式でスクラムを経験して慣れていくのではなく、ワークショップでスクラムのルーチンを短期集中型でくり返し経験することで、スクラムにおける各種イベントや作成物の位置づけや意義を疑似的に体験しながら理解できます。

リモートで実施可能

冒頭でも紹介したとおり、ワークショップの題材は「モンスターハンター」です。

「モンスターハンター」はモンスターを狩猟するゲームですが、オンラインで4人チームを組むことができます。
そのため、オフラインで一同会する必要がなく、すべてオンラインで完結できます。
昨今ではリモートワークを採用しているチームも多いでしょう。
そういったチームにおけるオンボーディングに最適です。

また「モンスターハンター」では、狩猟シーンで素材を獲得して回復アイテムを作ったり、戦いを有利にするアイテムを作れます。
そのため、目的に向けて計画を事前に行い、実際に計画を実行しながら大きな目標の達成に向けてチーム全員が動き、不確定要素に対処することになります。
まさにスクラム開発を疑似的に体験するのに向いている題材です。

パート分け

スクラムワークショップを行う場合は、最初にスクラムの概要を知る必要があります。
もちろん、概要を知らずにワークショップに参加することは可能なのですが、それぞれのイベントや作成物の関連性や全体の流れが不明になり、あまりよい学習体験にはなりません。
そのため、モンハンスクラムも2部構成になります。

  • スクラム入門セッション
  • モンハンスクラムワークショップ

スクラム入門セッションを行うには、スクラムに対する概要的な知識が必要です。
適任が存在しない場合にはモンハンスクラムを実施した際の動画がありますので、そちらをご利用いただければ幸いです。

スクラム入門

まずはじめに、概要的な知識を俯瞰して得るためにスクラム入門として講義形式のセッションを行います。
もし、講義が難しいようであれば、次の動画を参加者に提示して視聴いただくとよいでしょう。


10:40-1:00:00までがスクラム入門セッションのパートです(埋め込み動画は10:40から再生するように設定しています)。

スクラム入門セッションはモンハン要素のないスクラムの概要解説ですので、他のスクラムワークショップの導入やスクラムの初期学習に利用もできます。

解説事項

スクラム入門セッションでの解説内容はスクラム開発におけるロール・作成物・イベントの概要説明です。


全体的な流れを追いながら各種作成物やイベントを解説しておくことで、実際のワークショップで参加者が「今何をやっているか」「それはどの位置づけなのか」を理解しやすくなります。

モンハンスクラム実施要領

これよりモンスターハンターを使ったワークショップの実施要領です。
各自でアレンジを加えて構いません。

モンハンスクラム動画

実際にワークショップを実施している動画です。


ワークショップ1:05:18から開始されます(埋め込み動画は1:05:18から再生するように設定しています)。

準備

オンラインワークショップなので、事前の準備を入念にしておくとよいです。
必要なものは次のとおりです。

  • モンスターハンター
  • ホワイトボード共有スペース
  • タイマー
  • プランニングポーカー

モンスターハンター

参加者の手持ちのモンスターハンターを使います。
移動のしやすさからモンスターハンターライズがお勧めです(2021年執筆当時)。

クエスト
装備の準備

参加者は装備の準備が必要です。
下位のクエストを想定して、次の武器・防具を準備しておきます(モンスターハンターライズ基準です)。

集会所☆1:武器RARE1、防具15程度
集会所☆2:武器RARE2、防具100程度、団子解禁
集会所☆3:武器RARE3、防具150程度、団子解禁

参加者のモンスターハンター習熟度により、武器のRARE度や防御力の基準を緩和して構いません。
なお、私たちは広域化と回復をもつ狩猟笛は禁止、オトモはワンコで裸縛りでやっていました。

☆3のクエストは難しいので☆2以下でやった方がグダりづらいです。
というか、主旨的には☆1だけで十分な気がします。

ホワイトボード共有スペース

miroなどのサービスです。
バックログやタスクボード、スプリントレトロスペクティブの振り返りで利用します。

簡易的なバックログとタスクボードは事前に用意しておくとスムーズです。
miroの場合の配置イメージは次のとおりです。

ユーザーストーリーごとにタスクボードを分けられるようにしておきます。

タイマー

タイムボックスの管理に使います。

動画で利用しているのは次のタイマーアプリです。
https://timer.onl.jp/

プランニングポーカー

ユーザーストーリーを見積もる際に使います。

動画で利用しているのは次のプランニングポーカーサービスです。
https://hatjitsu.toolforge.org/

モンハンスクラム Full 版

ワークショップは次の流れで行います。

  • チーム決定
  • ペルソナ決定
  • ユーザーストーリー作成
  • ロール決め
  • プロダクトバックログ作成
  • スプリント
    • バックログリファインメント
    • スプリントプランニング
    • 計画実行
    • スプリントレビュー
    • スプリントレトロスペクティブ
  • 振り返りとまとめ

スプリントを4回実行すると、全体で半日かかる想定です。
スプリントの回数を減らすことで所要時間は減らせます。

なお、動画内では配信という都合上、チーム決定~プロダクトバックログ作成が省略されています。

また、Full 版の名のとおり、ここで紹介している内容は本格的な内容です。
もう少し手軽にワークショップを実施したい場合は、後述のモンハンスクラム(簡易版)をご確認ください。

チーム決定

参加者同士でチームを組みます。
チームサイズは4~10名です。

参加チーム数はスクラムマスターの数に左右されます。
スクラムマスターはスクラム開発未経験者でも構いませんが、少なくともスプリントにおけるスクラムイベントを理解し、タイムボックスを必ず守り、メンバーに今すべきことを伝えられなくてはいけません。
もし、チームを複数にして実施する場合は、事前にスクラムマスターとなるメンバーを決定し、その旨を伝えておくとよいでしょう。

ペルソナ決定

参加者はそれぞれのペルソナを決めます。

「30歳 男性 ハンター 美食家」「25歳 女性 モデル」「60歳 男性 元ハンター 隠居済」といったように年齢・性別・職業・特徴を決めるとよいでしょう。

ユーザーストーリー作成

ペルソナにしたがって、参加者はユーザーストーリーを作ります。
参加者一人につき4つ程度作れば十分です。

ユーザーストーリーを作る際には次のテンプレートを使います。

『【どういった立場の人間】として【どういったもの】がほしい。それは【どういったことを達成したい】からだ。』

テンプレートを使った例として、動画で取り扱ったユーザーストーリーを紹介します。

『【美食家】として【熊肉】がほしい。それは【食べてみたい】からだ。』
『【女性のおしゃれさん】として【竜の素材】がほしい。それは【お洒落な洋服を作りたい】からだ。』

ロール決め

ここで決めるロールはプロダクトオーナーです。
チームにつき1名のプロダクトオーナーを選出してもらいましょう。

プロダクトオーナーはプロダクトバックログの管理を主体的に行います。

その他役職については次のとおりになります。

ステークホルダー:参加者全員(各自で記入したユーザーストーリーのステークホルダーになる)
スクラムマスター:トレーナー、事前協議済み参加者
開発者:参加者全員

プロダクトバックログ作成

参加者が作ったユーザーストーリーを並び替えてプロダクトバックログを完成させます。

ユーザーストーリーに不明瞭なところがある場合には、ステークホルダーにインタビューして明確にします。

スプリント

ここからスプリントを開始していきます。

スプリントのスパンは50分として、3-4回ほど実施できるとよいでしょう(動画では配信がダレないためにスプリントが1回です)。
なお、簡易版の場合はスプリントのスパンを1クエストにします。

バックログリファインメント(5分)

スプリントを計画するためにプランニングポーカーを使ってユーザーストーリーの見積もりを行います。
この際、あらためてユーザーストーリーを確認し、見積もりに必要な情報が不足する場合にはプロダクトオーナーがステークホルダーにインタビューします。
また、見積もり数値が巨大すぎる場合には、開発チームはユーザーストーリーの分割をプロダクトオーナーに提案できます。

同時に、完成の定義を簡単に共有しておきます。
たとえば『【美食家】として【熊肉】がほしい。それは【食べてみたい】からだ。』であれば、「アオアシラを狩猟する」「食用のため毒状態にしない」などです。
ここでの定義は厳密に作る必要はなく、上記のような簡単なもので構いません。

スプリントプランニング(5分)

スプリントプランニングではそのスプリントにおいて取り組むユーザーストーリーを選択し、タスク分けを実施します。
2週目以降のスプリントであれば、ベロシティを参考にして取り組むユーザーストーリーを決めます。

タスクは10分(デイリースクラムの間隔)で実行可能な粒度にします。
タスクの例を挙げておきます。

  • 回復薬を5個作る
  • スタミナ回復アイテムを1つ作る
  • 解毒剤を1つ作る
  • リオレイアの素材を1つ獲得する
  • アオアシラの腕を部位破壊する
  • オサイズチを操竜する
  • アオアシラを狩猟する

なお、狩猟タスクや狩猟対象からの素材獲得タスクについては10分を超えてもよいこととします。

計画実行(50分)

実際にタスクを実行していきます。

メンバーはタスクにサインナップして狩りに出発します。

モンスターハンターライズでは途中参加ができるので、採集系のユーザーストーリーをこなしたメンバーが途中から狩猟系のユーザーストーリーに参加できます。

デイリースクラム(3分)

デイリースクラムを10分ごとに行います(動画はネタ的な意味も込めて5分にしています)。
現地にいるメンバーはBCに戻ります。
デイリースクラムでは一人ずつ次の内容を報告します。

・前回やったこと
・次にやろうとしていること
・問題点

メンバーの同意により、デイリースクラムをスキップ可能とします。
デイリースクラムのスキップは連続しては行えないものとします。

スプリントレビュー(5分)

プロダクトオーナーが中心となって、ステークホルダー(参加者自身)とレビューを実施します。

チームは取り組んだユーザーストーリーのうち、達成できたもののデモを行います。
デモを行うのは開発者かプロダクトオーナーです。

ステークホルダーは完成の定義と照らし合わせながらユーザーストーリーを達成できているか確認して、フィードバックをします。

スプリントレトロスペクティブ(5分)

チーム全員で前回のスプリントの振り返りを行います。
KPT などの振り返りフレームワークを使います。

KPT を採用する場合は、P ばかりに囚われがちなので K を意識するように参加者を促すとよいでしょう。

振り返りとまとめ

ワークショップ全体の振り返りとまとめを行います。

参加者には是非感想を述べてもらいましょう。

モンハンスクラム簡易版

もう少し手軽にワークショップを実施したい場合は、動画で実施している方式が簡単です。
つまり、スプリントでこなすタスクはひとつのユーザーストーリーでひとつのクエストのみにします。
必然的に参加人数は4名までとなります。

それ以外の要素は同じですが、圧倒的に取り組みやすくなるでしょう。
ほとんど Full 版と同じ内容ですが、簡易版を実施するときの実施要領をこのあとに記載します。。

チーム決定

参加者同士でチームを組みます。
チームサイズは4名です。

トレーナーがスクラムマスターになるのがもっとも簡単ですが、メンバーの誰がスクラムマスターになっても構いません。
トレーナー以外がスクラムマスターになる場合には、トレーナーはスクラムマスターを支援します。

ペルソナ決定

参加者はそれぞれのペルソナを決めます。

「30歳 男性 ハンター 美食家」「25歳 女性 モデル」「60歳 男性 元ハンター 隠居済」といったように年齢・性別・職業・特徴を決めるとよいでしょう。

ユーザーストーリー作成

ペルソナにしたがって、参加者はユーザーストーリーを作ります。
参加者一人につき4つ程度作れば十分です。

ユーザーストーリーを作る際には次のテンプレートを使います。

『【どういった立場の人間】として【どういったもの】がほしい。それは【どういったことを達成したい】からだ。』

テンプレートを使った例として、動画で取り扱ったユーザーストーリーを紹介します。

『【美食家】として【熊肉】がほしい。それは【食べてみたい】からだ。』
『【女性のおしゃれさん】として【竜の素材】がほしい。それは【お洒落な洋服を作りたい】からだ。』

ロール決め

ここで決めるロールはプロダクトオーナーです。
プロダクトオーナーはプロダクトバックログの管理を主体的に行います。

その他役職については次のとおりになります。

ステークホルダー:参加者全員(各自で記入したユーザーストーリーのステークホルダーになる)
スクラムマスター:任意のメンバー
開発者:参加者全員

プロダクトバックログ作成

参加者が作ったユーザーストーリーを並び替えてプロダクトバックログを完成させます。

ユーザーストーリーに不明瞭なところがある場合には、ステークホルダーにインタビューして明確にします。

スプリント

ここからスプリントを開始していきます。

スプリントのスパンは1クエストとして、3-4回ほど実施できるとよいでしょう(動画では配信がダレないためにスプリントが1回です)。

バックログリファインメント(5分)

スプリントを計画するためにプランニングポーカーを使ってユーザーストーリーの見積もりを行います。
この際、あらためてユーザーストーリーを確認し、見積もりに必要な情報が不足する場合にはプロダクトオーナーがステークホルダーにインタビューします。
また、見積もり数値が巨大すぎる場合には、開発チームはユーザーストーリーの分割をプロダクトオーナーに提案できます。

同時に、完成の定義を簡単に共有しておきます。
たとえば『【美食家】として【熊肉】がほしい。それは【食べてみたい】からだ。』であれば、「アオアシラを狩猟する」「食用のため毒状態にしない」などです。
ここでの定義は厳密に作る必要はなく、上記のような簡単なもので構いません。

簡易版では狩猟クエストになるユーザーストーリーをお勧めします。

スプリントプランニング(5分)

スプリントプランニングではそのスプリントにおいて取り組むユーザーストーリーを選択し、タスク分けを実施します。

タスクは10分(デイリースクラムの間隔)で実行可能な粒度にします。
タスクの例を挙げておきます。

  • 回復薬を5個作る
  • スタミナ回復アイテムを1つ作る
  • 解毒剤を1つ作る
  • リオレイアの素材を1つ獲得する
  • アオアシラの腕を部位破壊する
  • オサイズチを操竜する
  • アオアシラを狩猟する

なお、狩猟タスクや狩猟対象からの素材獲得タスクについては10分を超えてもよいこととします。

計画実行(1クエスト)

実際にタスクを実行していきます。

デイリースクラム(3分)

デイリースクラムを10分ごとに行います(動画はネタ的な意味も込めて5分にしています)。
現地にいるメンバーはBCに戻ります。
デイリースクラムでは一人ずつ次の内容を報告します。

・前回やったこと
・次にやろうとしていること
・問題点

メンバーの同意により、デイリースクラムをスキップ可能とします。
デイリースクラムのスキップは連続しては行えないものとします。

スプリントレビュー(5分)

プロダクトオーナーが中心となって、ステークホルダー(参加者自身)とレビューを実施します。

チームは取り組んだユーザーストーリーのうち、達成できたもののデモを行います。
デモを行うのは開発者かプロダクトオーナーです。

ステークホルダーは完成の定義と照らし合わせながらユーザーストーリーを達成できているか確認して、フィードバックをします。

スプリントレトロスペクティブ(5分)

チーム全員で前回のスプリントの振り返りを行います。
KPT などの振り返りフレームワークを使います。

KPT を採用する場合は、P ばかりに囚われがちなので K を意識するように参加者を促すとよいでしょう。

振り返りとまとめ

ワークショップ全体の振り返りとまとめを行います。

参加者には是非感想を述べてもらいましょう。

まとめ

モンハンスクラムはリモートで行えるスクラムワークショップとして取り組みやすいものだと考えます。
スクラムを学ぶ目的以外に、レクリエーションとしても利用可能です。
興味が沸いたようであれば、ぜひ実施してみてください。
実施報告を待ってます!

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