本を書く行為を執筆といいます。筆を執って文章を書くという意味ですね。
ところで今の時代、本当に筆を執って文章を書く人はどれほどいるのでしょうか。
いまやコンピュータは人々の営みに食い込むように広がりを見せており、文筆業においてもそれは同じです。
はたして、コンピュータで文章を書く行為はなんというのでしょうか。
執コンピュータ? コンピュータを執る?
いずれもしっくりきませんね。
やはり執筆の方が適してそうです。
執筆を使いましょう。
この度 WEB+DB PRESS Vol.113 にてドメイン駆動設計の特集記事を執筆して寄稿しました。
この記事はそのあとがきです。
共著者の @little_hand_s さんによるあとがきはコチラ→ WEB+DB PRESS特集「体験 ドメイン駆動」を執筆しました [DDD]
あとがき
去る半年以上前 @little_hand_s さんより連絡が来たことに端を発します。曰くドメイン駆動設計の特集を共著でやらないか、と。
嬉しい申し出でしたが、実をいうとこのときすでに、年末年始に刊行予定のドメイン駆動設計入門書の企画がスタートしていました(いま必死に校正しています)。
なのであんまり無茶はできないなー、もし実現するなら早めに決めて早めに書かないとなー、と思いつつ打ち合わせに出向きました。
担当の編集さんを混じえた初回打ち合わせでは、次のようなことをコメントした記憶がします。
- 雑誌という媒体の性質上、重厚な内容はそぐわない
- 30ページ程度で語り切るのは難しいテーマ
- @little_hand_s さんがよく解説しているモデリングに焦点をあてたらどうか
昨今、ドメイン駆動設計は再燃したかのように盛り上がりを見せているとはいえ、まだまだ初学者向けの情報が少ないと感じています。
必要なのはきっと参考事例。それも解説付きの。
企画はモデリングに焦点をあてたドメイン駆動設計の入門記事になりました。
コンセプトが決まったので、章ごとのテーマも一気に決定。
「これなら @little_hand_s さんの単著でいけそうだなー」と思って自分は辞退しようかと考えたのですが、なんだかんだで一緒に進めることに。
ちょうど、この直前に企画書を書いた経験があったので、1章の目次案を仮組して、オンラインでやり取りしながら全体的な目次案を完成させて、安心しきったので1ヶ月放置しました。
知ってましたか。
人間は締め切りに追われないと、とことん怠惰になれるんですよ。
(実際のところは動き出すにはまだ早いとのことだったので、書籍執筆に注力してました。)
そして3月も終わる頃、正式な企画書を作ることになり慌てて作り始めることになります。
見事な締め切り駆動ですねぇ。
企画書が無事通って7月から執筆開始。
最終的に自分の担当は最初と最後の章になりました。
なんとか読者の興味を引いて、エモーショナルに読後感を演出する役です。
別名美味しいとこ取りともいいます。
執筆期間は1章につき大体2週間程度で初校はひと月ほどかかったかなぁ。
分量的には大した量ではないのですが(ボトムアップドメイン駆動設計の4分の1ですからね)、短い分魅せ方に苦労するというか。
それから何度かブラッシュアップを重ねてなんとか完成へ漕ぎつけました。
結果は皆さんのお手元に届いているとおりです。
もしもお手元にない場合はリンクを貼っておきますのでお買い求めくださいませ(ダイレクトマーケティング)。
内容について
雑誌の問題点はあとがき(という名の言い訳)を書く場がないことだと思います。
ここで少し内容についても言い訳をしておきましょう。
今回の私の役目はフックとエンディングです。
フックの出来は読者の数に直接影響しますし、物語に対する当事者意識も左右します。
本特集は「体験」と銘打っているとおり、読者には物語に没入してもらう必要があります。
エンディングの出来は読者の次の行動を引き出します。
せっかくの入門記事、読んでもらったら次のステップに進んでもらわなくてはなりません。
いずれも決して手を抜けるものではありません。
次の言葉を念頭に置きながら言葉を綴っておりました。
絶望を差し出して臆病を肯ずれば、人は自ずと萎縮する。
希望を差し出して勇気を与えれば、人は自ずと動き出す。— nrs (@nrslib) October 25, 2019
プロット自体は最初に思い描いたままなので難しくなかったのですが、媒体が雑誌ということもあり、少し軽めで面白みのある言葉を選んで飽きさせないように、とにかく言葉選びに四苦八苦した印象です。
その分お気に入りのフレーズはいくつかあって、一番のお気に入りは片道ロケットの下りです。
次点は探検家かなぁ。工数原理主義者も好きですねぇ。
機会があったら皆さんの好きなフレーズを聞いてみたいところです。
言葉以外の文章構成は現状と理想の対比を繰り返し、少しずつ意識を理想に近づけるように仕立てたつもりです。
ここら辺はプレゼンテーションと一緒ですね。
そんな感じで苦しいながらも楽しい執筆でしたが、読者のみなさまは面白いと感じていただけたでしょうか。
読後「エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計」を手に取ってみたいと思ったでしょうか。
もしくは手に取ったでしょうか。
であれば私も苦しんだ甲斐があったというものです。
ありがとうございました。
執筆を考えているみなさんへのアドバイス
執筆したいと考えている皆さんへ向けて、私からお伝えしたいアドバイスは次のとおりです。
知ってます?
締め切りを乗り越えると
その先にはまた別の締め切りが待ってるんですよ?
— nrs (@nrslib) October 25, 2019
これを知っておくのとおかないのでは、心構えがまったく異なります。
是非とも覚えておいてください。
それではよい執筆ライフを!
おまけ
ドメイン駆動設計の入門書は年末年始になりそうです。
必死に校正がんばってます。
いましばらくお待ちください!